怪・その6

「公園から来る」



私道と私道に挟まれた、長方形の公園。
公園という名でしたが、遊具はなく、
放課後の小学生が数人でサッカーをしたり、
犬の散歩の方が
ドックランのように使ったりされていました。

私は、私道を挟んで公園と平行に建てられた、
2階建てのアパートで一人暮らしをしていました。

夏の始まりの頃、
私は2回続けて
可燃ごみを出しそびれてしまいました。
ゴミ収集の時間に起きられなかった私は、
匂いや虫が気になり、焦っていました。

扉付きの収集所であること言い訳にして、
前日の深夜に出すことにしました。
午前2時に玄関を開け、人目が無い事を確認すると、
早足で部屋を出ました。

公園横を通り過ぎ、
無事にゴミを捨てられた私は、
ホッとして帰ろうと振り返りました。

すると、
公園から私道へ出る階段を登って来る
男の子が目に入りました。

学生帽を目深に被っていましたが、
段々と顔が見えてきます。

瞬間、
目が合ってはいけない!
という強烈な思いと鳥肌に襲われ、
ほとんど駆け足で男の子の前を走り抜け、
部屋に駆け込みました。

当時飼っていた猫を抱いて離せないまま、
朝を迎えました。

階段を登ってこちらの私道に出るには、
グラウンド内を移動する姿が
目に入らない訳がないこと。

いつの時代のものか、
もう目にすることの無かった、
学生帽、斜め掛けの白い布製の学生鞄、
詰め襟の学生服。

目撃した時刻。

すべてが現存するものとは思えませんでした。

なぜか、20年近く口にすることが出来なかった
経験談です。

(c)

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2023-08-04-FRI