怪・その15

「あおり運転?」



知り合いの男性から聞いた話です。

ある夏の夜、その男性は、
北陸方面の海沿いの道を車で走っていました。
すると後ろから来た車が、
車間距離を詰めてきました。
何度もパッシングをして、あおって来ます。

追い越しできない道を走っていたため、
男性はとりあえず逃げようと思い、
スピードを上げました。
かなりスピードを出したということですが、
後ろの車は、ぴったりついてきます。

男性は車を走らせながら、
速度違反を取り締まるオービスに気付きました。
多分、写真を撮られただろうから、
後で警察に呼ばれてしまうな、と思ったそうです。

やがて、路肩にスペースがあるところに出ました。
男性は、あおってくる車に
追い抜いてもらおうと思い、車を停めました。
しかし、そこにあおり運転の車もついてきて、
後ろに停めたそうです。

車から誰か降りて来るだろうと思ったのですが、
なぜかドアは開かず。
1分もしないうちに、
急発進して行ってしまいました。

一体何だったのだろう? と思いながらも、
男性はそこから目的地に向かい、無事に到着しました。

後日、男性の予想どおり、
警察からスピード違反の件で連絡がきました。
出頭して担当者に状況を説明したところ、

「実は、あなたを呼ぶ前に、
後ろを走っていた車の運転者を呼び、
話を聞いた。

その話とあなたの話に矛盾がない。
今回はこのまま帰って結構です」

と言われました。
反則キップは切られず、罰金も取られず。
男性は不思議に思い、
どういうことなのか尋ねました。

すると、

後ろの車の人は、
あおっているつもりはなかったそうです。
では、なぜ車間距離を詰めたり、
パッシングしたりしたのか。

それは、男性の車の上に、
女の人がしがみついていたから。
危険だと思い、
何とか知らせようとしていたと言うのです。

しかし、男性が路肩に車を停め、
自分も後ろについて停めた時には、
女の人の姿は消えていたそうです。

自分が見たものはもしや‥‥?
と恐ろしくなり、
急いで立ち去ったということです。

その話を聞いた男性は、
にわかに信じることはできませんでした。
いかにも怪しい。
なのになぜ、警察がそれを受けいれたのか?

男性は、とりあえず
オービスの写真を見せて欲しいと頼みました。
しかし、なかなか差し出してくれません。
何度も「本当に見ますか?」と聞かれたそうです。

どうしても、
と頼んでようやく見せてくれたその写真には、
見覚えのない、髪が長い女の人が、
自分の車の屋根にしがみついていたそうです。

(ねー)

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2023-08-11-FRI