おとなの小論文教室。

受験のテクニックとして、小論文の書き方を勉強した?
その後は、ナイスなテキストを書いていますか?
考えること伝えることの愉快を、ここで味わいましょう。
ありがたいことに、小論文というものを
考えたり、たのしんだり、たくさん読んできた
カジュアルで優しい先生がいるんです。
さぁ、山田ズーニー先生、お願いしまーす。

Lesson1097
ヤジルシ

電子掲示板をよく読んでいた時代のことだ、
小さなことなのに、なぜか、
いまだに忘れられないことがある。

その日、

トピックを提供していたのは、
元恋人に残酷な裏切りを受けたと言う女性。

しかし、その女性は、
元恋人に恨みごとを言わず、
悔しさを全部バネにして「自分磨き」に励んだと言う。

女性は、少し先にある「集まり」に目標を置いた。

その集まりには元恋人が来る、
共通の友人知人も来る。
結婚式だったか何だったか、
たしかそんな集まりだったと思う。

女性は、その日までにダイエットをし、
運動してカラダの線も整え、
髪型も、メイクも、イメージチェンジして、
洋服も、靴や、バッグまで、洗練しつくし、

見違えるほど美しくなって集まりに出た。

ルッキズムやポリコレが
まだ話題にすらのぼってない時代だ。
映画で綺麗になって見返すものがヒットしていた。
TVではダイエット企画や、
プロのスタイリストが外見を見違えらせる
「変身もの」をバンバンやっていた。

そんな時代の追い風の中で、
当時、女性に対する賛辞で掲示板はあふれた。
「裏切られたのに、泣き言を言わず、
努力に変えて、結果を出して、素晴らしい」と。

その時、
皆の一体感を切り裂いて、
あまりにも冷たい書き込みをした人がいた。

「くだらない! 本当につまらない!」

一瞬で、掲示板の空気が凍りついた。

私は、なんてひどいことを! と思った。

この女性は、一つまちがうと
痛みや喪失感で潰れてしまうとこだった、それが、
見返すことで、どうにかやっと持ちこたえただろうに。
「たとえ思ったとしても口にすべきじゃない」、
その想いは今も変わらない。

けど、しばらくして、こんなことが起きた。

こんどは私自身が仕事で理不尽な目にあい、

平気なふりをしても、
どんどん気持ちは落ちていく。
なんとか落ち込みを止めよう、上向かせよう、と私は、

「いまに見てろ、すっごくいい仕事をして見返してやる!」

と口に出して言ってみた。
逆境をバネにしようと、「バネ、バネ!」と
自分に言ってみるも、気持ちはどんどん下がる。

具体的にイメージしないとだめだ、と、
私は、成功して、晴れ舞台にたって、
見返しているとこを思い描いてみた、
その時、

「くだらない! 本当につまらない!」

あの掲示板の顔も知らぬだれかの言葉が
よみがえったのだ。

みるみる私のヤジルシは、しぼんでいった。

いつか成功して、キラキラ輝いて、
私をひどい目にあわせた人たちを
ギャフンと言わせてやる、というヤジルシは、
具体的に考えていくと、本当に、つまらなかった。

そもそも成功のイメージが「紋切り型」だ。

どうして、「見返してやる」というときの
成功のイメージって紋切り型なんだろう?

見せつけるには、
万人に分かりやすくしないといけないからだ。

俳優さんだったら、
アカデミー賞で最優秀とって、
スピーチしてるところをイメージするとか、

文章書く人だったら、
直木賞とって、スピーチして、
ベストセラーになって、とか。

あの掲示板の女性も、
きっと万人にわかりやすい美人を目指したはずだ。

現在、美しさは多様化し、
パリコレのモデルさんだけを見ても、
体形も、肌の色も、顔立ちも、
それまでの固定概念を打ち破った
驚くような魅力が次々と花咲いている。
けど、あの時、あの女性が目標にしたのは、
そうした自分だけの個性ある美とは違っていたはずだ。

「自分のヤジルシはどこに向かっているか?」

人にはそれぞれ、
本来、心が向かうヤジルシがあるように思う。

他人から見たら、ちっぽけでも、バカにされても、
自分の心が切実に希求してやまない
幸せのカタチなり、成功のカタチなりがある。

それが、だれかを見返すとなったとたん、
一般的なわかりやすいカタチにすりかわってしまう。

そんなわかりやすい見せびらかし用の成功で、
相手を見返しているところを、
具体的にイメージしてみよう。

つかの間、相手をギャフンと言わせて快感かもしれない。

けど、快感は一瞬、
きっと私だったら、その直後から、
「虚しさ」が広がっていくと思う。

「ここは本来、私のヤジルシが向かった場ではない」

と後悔するだろう。
見返すことにとらわれて、
わかりやすい成功のカタチにはまってしまい、
本来の自分のヤジルシがズレてしまっていたと。

見返すために、綺麗になった人も、
見返すために、成功した人も、人はそれぞれ。
本人がそれで満足しているなら、
私は心から尊重する。

ただ、私に限って言えば、
だれかを見返すために何かをしたくない。
なぜならそれは、
見返す相手にヤジルシが向いているから。

目標の中に、イヤな相手をずっと抱え続けて
進んでいくなんて、まっぴらだから。

綺麗になりたいなら、
ゼロから自分が描く理想に向かって美しくなりたいし、
成功したいなら、
自分だけの描く理想に向けて進みたい。
そこに相手を混ぜたくない。

それ以来、私は、見返すということをしない。

たとえ理不尽な目にあったとしても、
相手と話し合うようにしているし、
たとえ、話し合えない状況でも、

「相手には、きっと何か事情があるはずだ」

と、想いやってみたり、

「相手のひどい一面は、
相手が持つ多様な側面のうちの、
私に向けられたほんの一面にすぎない。
相手には良い面も悪い面もいろんな側面があり、
相手が好きな人には良い面も見せるのだ」

と、少しひいた広い視野で相手全体を見ようとしたり。
それでもダメな時は、

「許す=損したまま手放す。」

そうして、見返すような魂胆は、
さっさと手放してしまうようにしている。

自分のヤジルシは見失いやすいから。

まるで方向磁石(コンパス)の針のように、
常にプルプル揺れていて、
恨みのような強い磁場があれば、
とらわれやすく、ズレやすい。

「自分のヤジルシはどこに向かっているか?」

見失うな、守り抜け!
と私は思う。

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【満員御礼!】この講座は満席になりました。
キャンセル待ちも締め切りました。
たくさんのお申込みありがとうございました。

宣伝会議 表現力養成コース

編集・ライター養成講座20周年記念講座

山田ズーニー専門クラス
——–伝わる・揺さぶる!文章を書く

山田ズーニーです。
私は、これまで北は北海道から南は鹿児島まで、
大学・高校生から
ビジネスマン・プロのライターから作家まで
幅広い層に、数えきれないほど表現講座を開いてきました。
その原型が生まれたのが、
宣伝会議の編集・ライター養成講座でした。
現在も講師をつとめており、毎回、
受講者に次のような声をいただき手ごたえを感じています。

 

・自分の想いの根幹を探るという経験を
こんなにじっくりと時間をかけてやったことはなかった、
得難い経験でした。

・終了したとき、この講義の意図が
身体にしみわたるように理解できた。
コミュニケ―ションが苦手だったが、
非常に楽しく有意義に受講できた。

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・現実の出来事を多角的に見て、表現のヒントを探すことは
全ての実務に活かせると思います。

・自分の可能性を信じようと思えた。
自分はつまらない人間ではない。

今回20周年を記念して、ご担当者の、
「この先を行く特別な講座をひらきたい。
表現力をつけたい気持ちはあるものの、
そもそも自分に伝えたいことはあるのか、
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自分を貫くテーマを発見したり、
相手の心に響くように伝えるコミュニケーション力を
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2時間×12コマで、
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相手に伝わる表現、社会に説得力を持って書く、
さらに、自分にしか書けない主題を発見して書く!
までを責任を持ってサポートします。
ひとりでは気づけない自分の潜在力も、
多彩な仲間とともに引き出しあえるから開花します!
表現を通して他の受講者と心底通じ合える
「感動」の授業です。
心を揺さぶる文章を書きに、ぜひ、来てください。

あなたには書く力がある。

●詳細・お申し込み・お問い合わせは、すべて
こちらのページから
(株)宣伝会議 教育事業部 担当:小林Tel.03-3475-3030まで
*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。


表現して人とつながる勇気のレッスン!



『理解という名の愛がほしい。』
河出文庫

会社を辞めた私がツラかったのは、まわりが
平日の昼間うろうろしている
無職のおばさんと見ることだった。

それまで仕事をがんばって経験を積んできた
他ならぬ私をわかってほしい。

この発想・考え・想い・感性が、
かけがえなく必要とされたい。

理解という名の愛がほしい。

「理解されたいなら、自分を表現しなきゃだめだ。」

やっとそう気づいた私は、
インターネットの大海原で
人生はじめての表現へ漕ぎ出した。


山田ズーニーワークショップ満員御礼!

いったんウェイトリストを締め切ります。

2017年6月開講したワークショップ型実践講座
「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」
にたくさんのお申込みをありがとうございました。

大好評で即日満席、
2期、3期、4期と増設するも追いつかず、
1年待ちのウェイトリストのみ受け付けておりましたが、
現在までに12期分のお申込みがあり、
2年待ち以上の方が出てくる見込みが強くなりました。

責任を持って対応するため、
ここでいったんウェイトリストを締め切ります。

言葉の表現力をつけたいと
申し込んでくださった方々の想いを大切に
受け入れを進めてまいります。

 

●この講座に対するすべてのお問い合わせはこちらへ。

お問い合わせ先 
毎日文化センター東京 TEL03-3213-4768

http://www.mainichi-ks.co.jp/m-culture/each.html?id=699

2018年以降、東京開催、詳細未定、1年待ち。

*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。

 

ワークショップ型実践講座
「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」

――3回で一生ものの書く力・話す力が育つ

書くことによって、人は考える。
自分の内面を言葉で深く正しく理解する。
そのことにより、納得のいく選択ができるようになり、
意志が芽生える。

さらに、

言いたいことを、相手に響くように伝えられるようになる。
インターネット時代に、広く社会に
説得力を持って自分の考えを発信できるようになる。

書く力=想い言葉で表現するチカラを鍛えれば、
自分を知り、自分を表現することができる。

自分の想う人生を、この現実に書いて創っていける。

あなたには表現力がある。

山田ズーニーワークショップ型実践講座、
2017年6月東京で開講しました!


「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.comまでメールでお送りくださいね。

注:講演など仕事の依頼メールは、
上記アドレスに送らないでください。
山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)に
直接ご連絡いただくか、
山田ズーニーの本を出している出版社に
連絡先をお問い合わせのうえで、
ご依頼くださいますようおねがいします。


★出演情報などお知らせのあるときは
 山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)にも掲載します。



『半年で職場の星になる!
 働くためのコミュニケーション力』
 ちくま文庫

あなたが職場の星になる!コミュニケーション術の決定版。
一発で信頼される「人の話を聞く技術」、
わかりやすい報告・説明・指示の仕方、
職場の文書を「読む技術」、社会人としてメールを「書く技術」。
「上司を説得」するチカラ、通じる「お詫び」、クレーム対応、
好感をもたれる自己紹介・自己アピールのやり方。
人を動かし現場でリーダーシップを発揮する表現力から、
やる気が湧き・上司もうなる目標の立て方まで。
この1冊で仕事のフィールドで通じ合い、チームで成果を出していける!
自由はここにある!


ラジオで、山田ズーニーが、
『おかんの昼ごはん』について話しました!

録音版をぜひお聞きください。
「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日~)
 インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
無料で聴けます。
 聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
 (MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
 または、iTunesからのダウンロードとなります。


ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!


『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。



『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!



『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
            ――山田ズーニー。



『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。



『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!



▲文庫版でました!
 あなたの表現がここからはじまる!

『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)


ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/

おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。



「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!

『考えるシート』文庫版、出ました。



『話すチカラをつくる本』
三笠書房

NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。


『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫

自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!


『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社


『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社


『おとなの小論文教室。』
河出書房新社


『考えるシート』講談社


『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
筑摩書房</small



『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書

内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)



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