怪・その11

「ひとりのオフィス」



長く勤めた会社は、都心のビルの最上階、
8階にオフィスがありました。

営業職の私は日々仕事量が多く、
深夜まで残業することが頻繁でした。

そのうちに何となく、
「ここ、出るよね」
という話をちらほら耳にすることがあり、
怖かったのですが、
そうは言っても
仕事は終わらせなくてはなりません。

ひとり、ふたり、と帰宅していき
最後のひとりになる日も多かったです。

ひとりになると怖いので、
とにかく早く終わらせて帰宅したい一心で
仕事に集中し、気にしないふりをしていましたが、

今、ちゃんと思い返すと、いっぱいありました。
おかしなこと。

もう誰も居ないはずなのに、
エレベーターホール側にある、
男性用トイレのドアが

バタン!

と大きい音で閉まる音がしたり、

ショールーム
(デスク側でなくお客様を通す部屋)を
明らかに誰かが
歩いている気配(廊下がきしむ音)がしたり、

静まり返ったオフィスに、

パシッ!

という音が響いたり。

それでも気にしないふりをして、
終電の時間を気にしつつ、
必死に終える、その日のノルマ。

すべての電気を落とし、鍵を閉め、
さて、エレベーターに乗って一階に降ります。

降りる途中、
これも何度かあったのですが
なぜか同じ階でエレベーターが停まり、
ドアが開きます。

でもそこは真っ暗なオフィス。
乗るのを待つ人は、誰も居ません。
必ず同じ階で停まりドアが開きます。
待つ人は居ないのに。

毎回ゾクッとして怖かったし、
とにかく違和感がありました。

そう言えば、そのビルの裏手には
墓地が広がっていました。
これらの不思議な出来事と
何か関係があるのかもと、
今は感じています。

15年以上前の話です。

(AKKO)

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2023-08-08-TUE