怪・その12

「新しい団地」



私の住んでいる町に、
比較的新しい円形の団地があります。
周囲は昔ながらの農家の集落で、
その団地の場所は昔、
大きな沼地だったそうです。

その団地の中にいくつか、
新しい家族が入居しても
すぐに空き家になる家があります。
そのうちのひとつを知人が買って
引っ越してきたのですが、
やはり
1年足らずで出ていくことになりました。

理由を聞くと
「子供部屋の押し入れの中から
毎晩ドンドンドンとすごい音がする」
というものでした。

ある日の朝、明るくなってから
恐る恐るその押し入れの中を覗き込むと、
襖の裏側に
泥の小さな手の跡が
ひとつだけついていたそうです。

とある会合でその話をすると、
農家のおじいさんのひとりが
「あそこは昔、
いろいろなものを沈めた土地だから‥‥」
とポツリ。
すると別のおじいさんが
「それは言ってはならん!!」
と今まで聞いたことがないような大声で
怒鳴りました。

何を沈めた土地なのか、
どういういわれのある土地なのかは、
もちろんそれ以上
聞くことが出来ませんでした。

(M)

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2023-08-08-TUE