怪・その41

「家を見にきた」



今から7年ほど前、
実家の祖母が亡くなりました。

私は実家から車で4時間程離れた県外に住んでおり、
祖母が亡くなる5年ほど前に、家を建てました。
実家に帰る度に
「いつかあんたの家に行ってみんといけんなぁ」
と祖母は言っていましたが、
日帰りもしんどいし、
泊まりも迷惑をかけると思ってか、
実現出来ませんでした。

お葬式が終わり、
子供たちと主人は先に帰りましたが、
私は忌引き休暇を使い、
家の片付けなどを手伝うため、
3泊してから実家を後にしました。

平日だったので、家に帰ると誰もおらず、
お葬式からの疲れと運転の疲れで
荷解きもせずソファに座っていると、
どこからともなくお線香の匂いがしてきました。

うちでは、亡くなった猫のため、
お線香を朝晩い焚くのですが、
あまり香りのないものを使っているので、
朝に主人が焚いてくれたものではありません。

どんどんお線香の香りが強くなってきて、
気がつきました。
四十九日まで毎日灯す、
あのよくある緑色のお線香の匂いでした。

お線香の匂いが
ソファに座っている私の前をフワッとかすめて、
階段の方へ行った気がしました。

その後、また私の前に
お線香の匂いがフワッと戻ってきて、
パッと消えました。

さっきまであんなに匂っていたのに、
一瞬でなくなりました。

きっと、祖母が私の家を見たくて、
車に乗ってついてきたんだな! と思いました。
そして、家の中をくるっと見て、
納得して帰ったんだなと思います。

どうせならひ孫が帰ってくるまで
いたら良かったのに、
相変わらずせっかちだなあと
おかしくなりました。

(n)

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2023-09-01-FRI