怪・その19
「優しい光と」
幼稚園生だった50年前、団地に住んでいました。
団地の子どもたちは、夜に叱られると、
「棟を一周してきなさい!」
と言われて、外に出されるのがおきまりでした。
棟を囲む通路は
両側のベランダから見渡すことができ、
屋外灯もあるので安全だと
親たちは思ったのでしょう。
私も叱られては外に出されていましたが、
他の子のように泣いたりはしませんでした。
しょんぼりと階段を下りて通路に出ると、
丸くて大きな光の玉が
大人の背丈位の位置に浮かんでいて、
先導するように一緒に歩いてくれるからです。
ほっとするような優しい光と一緒に歩くのは
楽しみでもあり、
帰る頃には気持ちが落ち着いて、
素直に謝れたのを覚えています。
「ごめんなさいが言えない子」だった私を、
守り、導いてくれた誰かがいたと今でも信じていて、
それが小さな自信になっています。
(「暗闇が怖くない子」とも言われた子)